Column
2024.1.10
令和6年能登半島地震による津波を地震発生後18分以内に予測
2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震によりお亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被害に遭われた全ての方々とそのご家族及び関係者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
弊社と東北大学、大阪大学、国際航業株式会社、株式会社エイツー及び日本電気株式会社と共同で開発したリアルタイム津波浸水被害予測技術により、2024年1月1日の令和6年能登半島地震に伴う津波現象の予測を,地震発生直後に実施し18分以内に完了させることができました。この予測には東北大学サイバーサイエンスセンターのスーパーコンピュータAOBA-Aと大阪大学サイバーメディアセンターのスーパーコンピュータSQUIDをリアルタイムに利用することにより短時間での予測を可能としました。
予測を行いました津波発生の状況を以下に示します。
(1)推定した地盤の動き
地震により地盤が図1のように動いたと推定しました。赤色が地盤の隆起、青色が沈降を示しています。地盤の隆起は最大40cm、沈降は23cmと推定しました。
(2)津波の水位
石川県から北海道までの沿岸部における津波高について予測しました。図2に示したように津波は石川県から北海道まで広い範囲に伝播していることがわかります。そして、石川県の能登半島で2.5m以上の津波が発生することを予測しています。ここで示した水位は各沿岸部の海域での最大津波高です。津波が堤防を越えて陸上を溯上した場合には、陸上での浸水の深さは海域の水位より高くなることが多々あります。そのため、予測された水位より高い場所に避難する必要があります。
図3は富山湾周辺を拡大した図です。能登半島の飯田湾や珠洲市三崎町に高い津波が発生することを予測しています。津波は波動現象ですので、海岸や海底の地形によって反射や回析を伴って伝播します。今回の予測結果は図1に示したような地震による地盤の動きにより生じた津波が複雑な地形の中を伝播した結果を考慮したものです。
震源位置や地盤の動き方が異なる他の地震では、津波の励起と伝播の状況は異なるので、各地での津波の高さは異なってきます。そのため、今回の地震で高い津波が到達しなかった場所でも、今後の地震によって高い津波が到達する可能性はあります。これからも津波対策を忘れないようにしていただければと思います。
文責:取締役 撫佐昭裕