Column

2024.3.11

リアルタイム津波浸水被害推計システムの誕生

 

3回目のコラムとなります。
1回目は、越村さんの防災デジタルツインといった「未来」像、
2回目は、撫佐さんの1月1日のリアルタイム津波システム稼働のまさに「現在」の報告ということで、私は少し前の話をしたいと思います。

 

「部活のよう」、私たちが「リアルタイム津波浸水被害予測システム」を喧々諤々とつくっていった様子を、コアメンバーの研究者がこう表現しました。
    集まったメンバーのチャレンジは、それまでは数日かかっていた津波の伝播・浸水シミュレーションを、それまでは地震情報から津波被害の算定・可視化までの複数の独立していた過程を、全て自動で、かつ30分以内に送信までを完了させること。

    なお、津波計算は事前に大量の計算を済ませておくデータベース型ではなく、地震が起こった時にスーパーコンピュータを使って計算をするより困難なフォワード型(その時に計算を行う方法)で。

 

    大学の津波工学、地震学、計算工学(スーパーコンピュータ)の先端研究者と企業のエキスパートが集まり、文字通り世界初のシステムをつくりあげていきました。
    メンバーはそれぞれの研究、仕事と並行して取組んでおり、放課後のような時間帯に集まることが多くありました。

    目的を一つにした専門分野外のメンバーとの交流は、刺激的で楽しい時間でもあり、まさに、「部活」といった感じでした。
    当時の雰囲気は、全員が「できるかどうか、わからないけど、とりあえず全力でやってみよう」というような感じでした。

    東日本大震災の記憶が生々しい2016年頃のことです。

 

    リアルタイムシステムの実現に向けての超えなくてはならない壁はいくつもありましたが、主だったものをあげると

    ・地震分野:地震発生直後の限られた情報から、津波を起こす海底地盤の変位の推定
    ・計算分野:スーパーコンピュータを用いた津波計算の高速化
    ・津波工学:エラーの起らない安定した津波計算プログラムの構築
    ・通信分野:短時間での計算結果の可視化・送信
などなど・・

    そして、これらを24時間365日、全自動でエラー無くつなげ、30分以内で通信まで終える全体システムの実装。
 

  この結果は、現在のリアルタイム津波被害推計システムが実利用され、この成果を社会実装していくことを目的にした株式会社 RTi-castの設立、そして対象領域が毎年拡大され、現在では津波災害が心配される全国の沿岸を対象とできていることに繋がっていきます。

 

    東日本大震災、そして能登半島地震での被災された方々に心より哀悼の意を表します。

 

※つたない文章で申し訳ないですが、文字として残しておきたいと思っており、今回のコラムとさせていただきました。
※なるべく多くの方にわかるように、専門用語を少なくしています。そのため、正確ではない表現があります。

 

                                                                          株式会社 RTi-cast 村嶋陽一